【コラム】曳家ってどんな時に使うものなの?

公開日: : コラム

   

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はじめまして。曳家岡本の岡本直也と申します。

今年の夏に施工しておりました千葉県夷隅郡御宿町での古民家再生の現場見学に、ハウジングバザールのスタッフさんが来て下さったご縁から、今回この原稿を書かせていただくことになりました。

「今建築現場は職人不足だ!」だそうですが・・・曳家にかぎると、余ってます(汗)。いや、余っているという表現は少し変でした。曳家は、仕事不足に困ってます。なのでほとんどの曳家業者は基礎工事や解体、斫りなどと兼業しています。弊社は今では数少ない『曳家の専業者』です。

と、そんな話を浄法寺さん(ハウジングバザールのスタッフさん)にしていましたら「そもそもどんな場面で曳家に仕事を頼んだら良いのか、みんな判らないですよ!」と言われてまして、

世の中の人は、曳家って道路拡幅に伴っての家を動かす職人さんでしょう。というようなイメージしか持ってないけど、実は今やそんな仕事はめったに無くて(弊社では5年前にやったきりです)実際には沈下修正やら、古民家再生工事やらが主な工事となっています。

今回は第一回なので、
「えええ!そんな場面でも曳家さんに仕事、頼むものなのか!なるほどなー」
と唸る事例をご紹介させていただきます。

1)建物の配置間違い

1年に3棟くらいは「建築位置間違いで曳家してくれ」と工務店から依頼があります。
セットバックや日照権、はたまた土地の境界線の確認間違いで曳家のご依頼があります。実際のご依頼になるのはまれです。ほとんどは解体〜建て替えとなります。施主さんが新築を曳家するのを嫌がるからかな?

2)白蟻等で傷んだ土台や柱の抜き換えをしたいので持ち上げて欲しい。

築何十年も経ってくると柱や土台の一部が腐ったり傷んだりすることがあります。それを取り替える時に、建物が壊れたりしないように持ち上げてほしい、ということなんですね。
ただ、もちろんどんな持ち上げ方でも持ち上げれば良いといいうものではなくて、新しい土台を既存アンカーボルトに落とし込めるように高さを稼いで枕木を組まないと駄目ですから、施工範囲が狭くとも意外に持参する枕木や鋼材が多く必要になります。

これを予算が無いからと、専門じゃない業者・職人さんにサッポードで持ち上げさせたりしていて、斜めに突いてしまって事故(倒壊)を起こしてしまうこともあるようです。ここらへんは工務店の施工に対する考え方になりますが・・・。
この症状の工事ですが、湘南方面の現場で先日見積もりを書きました。雨漏り診断とかされている方からもご相談いただくことあります。

3)新築の柱の長さが足らない!

最近は木材の刻みも皆さんCAD図面任せですので、数字の入力ミスがあると施工までなかなか発覚し辛いようです。
今年は、1階の床面積だけでも100坪もある施設の新築工事中に「柱の長さが30cmほど足りない!」と発覚した現場があって、嵩上げをしておいて150本以上の柱を抜き換えるという、まずまず規模の大きな工事をさせていただきました。この規模になると、鋼材や枕木をある一定規模、所有している曳家さんでないと対応できないわけです。

弊社は昨年、ちょうど徳島県で1階が60坪の廻船問屋の家起こし+基礎造り替えのための嵩上げ工事と、法隆寺町での古民家の曳家工事を同時進行するために、廃業された曳家さんから資材を購入した後でしたので余裕がありました。
今、長い枕木だけでも3300本、鋼材も300本、ジャッキも360台くらい所有してます。これだけ確保している業者さんって他にそういないんじゃないかな。

4)ホゾ穴の位置が20mm間違っていた!

これはある『道の駅』の新築工事中に、120坪の建物のうち30坪ほどの範囲で土台のホゾ穴がきれいに20mmずつずれていた。そのため、持ち上げて、ホゾ穴を拡げるので柱の角度を直して欲しいというご相談でした。
見積もりを出しましたがご依頼は無かったです。どう処理したのかな??かけや(大きい木槌)でしばいたのかな?(汗)
でも集成材なんで強く叩くと折れますからね。どうしたんだろ?

5)台風で愛車の上に倒れたガレージを持ち上げてくれ!

これは、当初は普通に解体屋さんが入っていらしたのですが、施工中に「これ以上、車両が傷むことの無いように」というお施主さんからのご用命で私どもの出番となりました。
台風で倒壊したガレージからビンテージカーを引き出す為に屋根を持ち上げました。
この工事は、ものすごく歪んでしまった躯体をいかに車両に触れさせないようにしながらきれいに持ち上げるか?
施工プランを考え抜いて作るまでが大変でしたが、やり遂げました。

6)大きな鉄骨の柱が沈んでしまった!

近隣の掘削工事の影響で、大規模施設の入り口の屋根を支える根入り1400mmもの鉄骨の柱が大きく沈下、およびUFOキャッチャーのアームのように内側に斜めに入ってしまっていました。東日本大震災以降、沈下修正工事に対応できる業者さんは増えましたが、斜めになったものを水平方向に動かすような技術に特化しているのは、やはり曳家となります。
この工事は柱が長く、周辺環境(商店街)から制約条件が多い中、あっと云う間に直して見せて関係者のため息を頂きましたが、残念ながら公共工事ゆえ画像を公開できません。

いかがでしたでしょうか?
そうか!!曳家って、家を動かす以外に色々な仕事出来るんだな!!と憶えておいていただければ幸いです。
もちろん弊社「曳家岡本」も案外、閑しておりますのでお気軽にご相談くださいませ。
hikiyaokamoto@gmail.comあてでお願いします。

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曳家岡本の親方。かつて昭和南海大地震からの住宅復興のために興隆した土佐派の曳家技術の正統継承者。現代的な重力とび職から派生した曳家とは異なる繊細さが伝統構法や宮大工からの支持を集める。代表例は川越市うなぎ屋「小川菊」、石巻市雄勝町「モリウミアス」等。東日本大震災時の体験を書いた「曳家が語る家の傾きを直す沈下修正ホントの話」(主婦と生活社)、また建築系マンガ「解体屋ゲン」(週刊漫画TIMES連載中)に実在の人物ながらセミレギュラー出演中。https://magazine.cainz.com/author/76/1

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