【コラム】第8回「え、これもダメだったの?」~「してはいけない箸使い」を学び直す ~

公開日: : 最終更新日:2021/10/02 コラム

   

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「箸に始まり、箸に終わる。」 これが日本人の食事作法の基本です。コロナ禍においては「黙食」が是とされましたが、本来は多くの人と楽しく会話をしながら、美味しくいただくことが食事の醍醐味です。

お料理や一緒に食事をする人に対して心を寄せ、周りの人に不愉快な思いをさせない心遣いが、周囲への優しさであり、食のマナーの基本です。それとは逆に、他の人に不快な印象を与えてしまう箸使いを「忌(い)み箸」または「嫌い箸」といい、無作法な行為とされてきました。

ところが、昨今はどうでしょう。「嫌い箸」「忌み箸」を学校でも習わないし、家庭でも躾けられていないことが多くなり、ひと昔前の“当たり前”が当たり前では無くなってしまいました。いい年をした大人が平気で、してはいけない箸使いをしている様子を目にすることが度々あります。

まだ電気も無くガス灯だった頃の明治時代に書かれた『小学女礼式』にも、数々の「嫌い箸」が取り上げられています。なぜ、食事作法に禁忌事項が多いのでしょうか。それだけ、食べる行為には人を不快にさせる要素があるからです。昔の礼法書には、食事をする時「尤(もっとも)忌むべき病」という表記があります。それほどまでに、箸使いは日々の暮らしの中で大切だと考えられていたのでしょう。

作法の基本は、“相手を思いやり、してはならない事を知ること”ですから、この機会に、普段無意識にしていると思われる「嫌い箸」を確認し、正しい知識と動作を身に付け、次の世代に繋げていただきたいと思います。

≪人を不快にさせる嫌い箸≫

 箸使いには、その人の人柄が自然と現れます。見苦しくない箸使いが、楽しい食事の条件です。

  ねぶり箸・・箸についたものをなめて取る

  涙箸・・・・箸先から汁がぽたぽたこぼれる

  刺し箸・・・料理に箸を突き刺して食べる

  指し箸・・・箸で人や物を指す

  移り箸・・・取りかけた食材を離し、別の食材に替える

  迷い箸・・・料理の上であちこち箸を動かし迷う

  くわえ箸・・箸を置かず、箸先を口にくわえ器を持つ

  せせり箸・・箸を楊枝の代わりに使う

  探り箸・・・いろいろな料理を箸でほじくり返す

  押し込み箸・箸で料理を口の中に押し込む

  握り箸・・・箸を握って持つ

  かみ箸・・・箸先を噛む

  かき箸・・・器に口をあてて料理をかき込む(犬喰いになる)

  探り箸・・・料理を下の方から探り、具材を選ぶ

  振り箸・・・箸先についた汁などを振り落とす

  洗い箸・・・食器のなかで箸を洗う

  落し箸・・・箸を床に落とす(落としたら取り換える)

  すかし箸・・骨の付いた魚の上身を食べたあと、
        ひっくり返さずに骨越しに裏側の身をつついて食べる

  掻き箸・・・箸で頭などを掻く

≪箸や食器を傷つける嫌い箸≫

箸は神と人とを結ぶものとされています。材料も清浄な木や竹です。箸には持ち主の魂が込められていると考えられており、食べものの命と自分の命とを繋ぐための大切な道具です。

 寄せ箸・・・食器などを箸で手前に引き寄せる

 渡し箸・・・食事中に箸を器に渡す(もう、要りませんという意味)

 たたき箸・・箸で食器をたたいて音を出す

 回し箸・・・椀の中をぐるぐるかき回す

 そろえ箸・・食器の上や口の中で箸先を揃える

≪仏事に関わる忌み箸≫

祝い事と異なり、仏事は非日常ですから、仏事のさいの箸使いは縁起が悪いとされています。

  渡し箸・・・箸と箸で食べ物をつまんだり、料理をやり取りする

  立て箸・・・仏箸ともいい、ご飯に箸を真っすぐに立てる
        (亡くなった方の枕ご飯)

  拝み箸・・・両掌で箸を挟み、拝むようにする

  違い箸・・・木と竹の箸など、異質の箸を一対にして使う

「箸の上げ下ろし」という言葉を最近は聞かなくなりましたが、意外と人は見ています。「人のふり見て我がふり直せ」という言葉がありますね。食事は、美味しく楽しくが基本。だからこそ「嫌い箸」を知っておく必要があるのです。

ライタープロフィール
NPO法人 みんなのお箸プロジェクト専任講師 小柴皐月

図4

 幼少より、生田流箏曲を習い、それに伴い礼法、香道、茶道、煎茶道、など多岐に渡って和文化を学び、研鑽を重ねる。それらの稽古の中から“和の心と作法”の研究にも従事し、大学講師を経て、礼法・親子で学ぶマナー・暮らしの和文化・男子の作法・和食の作法・江戸の子育てなど、幅広いテーマで企業、治自体、豪華客船・学校関係などで講演。演奏家としても芸術鑑賞教室や国賓を歓迎する席での演奏をはじめ、国内外での演奏活動を精力的に行い、国際的に活躍している。

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礼法講師としての経験、及び自身の子育て・孫育ての経験から、「マナー教育や食育で基本となるのは毎日の食生活であり、お箸使いである」との確信を得る。以来、箸文化や箸使いに関するセミナーや、my箸作りを行うワークショップを多数開催。「日本のすべての子どもたちと、その親たちが、正しい箸使いを身につけるとともに、自分のお箸を丁寧に選ぶようになってほしい」「すべての日本人に箸文化の素晴らしさを知ってほしい」と願って活動している。
https://minnano084.com/
   

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